愚連隊と真っ当なハマグリとboy
最近の市川海老蔵暴行事件の報道の中で、その相手を「愚連隊」という呼称で紹介する記事に遭遇し(添付1風)、何と懐かしい言葉かと感動すら覚えました。辞書では、「愚連隊とは、暴力や不正行為を行う不良少年の一団のこと。【年代】 昭和時代」(添付2)と説明されていましたが、私の感性ではこの言葉は昭和30年代までの言葉で、それ以降は死語になったという感覚を持っていました。
そこで、身近にいる30歳代、40歳代の何人かの人にこの言葉のことを確認してみました。彼らの答えは、何となく聞いたことはあっても、使ったことはないというものでした。私の感性としては、私が中学生の時に新宿の繁華街の路地で不良、非行グループに路の出入り口を塞がれ、ナイフで脅されて小遣い銭を何回か脅し取られた(添付9風)という経験と、そのようなグループが徐々に愚連隊になっていくという時代が私の高校生の頃との想いがあったので、「愚連隊」の言葉に懐かしさを感じた次第でした。
私の感性から離れ、世の中では「愚連隊」はどのように定義されているかに興味を感じ、調べてみました。その結果、
①終戦直後の日本にあって、既存道徳概念から全く自由に本能の赴くままに暴力行為を行い、自己の欲求を満足させる活動を行っていた不良青少年の一群(添付3。戦争孤児(添付7)の一団が相当する。
②博徒(ばくと)、的屋(テキ屋)とともに、現代型の暴力団の三大源流の一つとなっている。暴力団安藤組を作った安藤昇や、安藤組幹部となった花形敬といった私たち世代に馴染みのある人間の出目は愚連隊であった(添付3)。
③その性格から、既存の非公認武力機構を持つ集団である博徒集団(本来は非公認ギャンブル経営組織)や的屋組織(本来は社寺における祭礼の場を中心とした露店経営者の自治・自衛的調整組織)とも対立し、抗争を繰り返した(添付3)。
という姿が浮かび上がってきました。
こういった解説と私自身の持っているものを合わせて、「愚連隊」という言葉を含んで、最後に「暴力団」にたどり着く社会風俗的な道筋を考察し、以下の4つの道筋を導いてみました。
道筋No.1
「スジモン」「渡世人」「筋者」「無頼漢」「ごろつき」→「博徒(ばくと)」→ヤクザ→(「愚連隊」、「テキ屋」と合流)→「暴力団」(添付3、4)
道筋No.2
「稼業人」「本職」→「テキ屋」→「ヤクザ」→(「愚連隊」、「博徒」と合流)→「暴力団」(添付3、4)
道筋No.3
「戦争孤児」→「不良」→「愚連隊」→(「博徒」と「テキ屋と合流)→「暴力団」(添付3、6、7、8)
道筋No.4
不安定な家庭など→「暴走族」「非行」→「不良」→「暴力団」(添付5、6、7、8、9)
これらの人の概念は、時代、出身地、土地柄で感ずるところは異なることと想いますが、私の場合子供時代に住んでいた新宿の地で、「テキ屋」の親分さんが近所に住んでいて、羽田空港などに連れていってもらったことや、ヤクザの親分の息子さんと同級になったことがあり、一緒に楽しくザリガニ摂り遊びをしたこと等を懐かしく思い出します。この頃はこの種の世界ものんびりした雰囲気があったと想います。
「愚連隊」に関していくつかの面白い発見がありました。その一つは、「愚連隊」は動詞の「ぐれる」から来ている言葉ということで、「ぐれる」にまつわる興味ある物語として:
『少年などが非行に走ることを「ぐれる」というが、この言葉はハマグリに由来する。江戸時代から使われるようになった。ハマグリの貝殻は貝合わせという遊びにも使われるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質を持っている。このことから、「はまぐり」の倒語として「ぐりはま」という言葉が生まれ、食い違って合わないことを意味するようになった。これが「ぐれはま」に変化し、さらに「ぐれ」と略されるようになる。そして、この「ぐれ」が動詞化したものが「ぐれる」である。ちなみに、「ぐりはま」の漢字は、「蛤」をそのまま180度回転させ、見た目を逆さまにしたものである。』(添付4)
という解説に遭遇しました。これは、グリハマは、ハマグリの正しい貝合わせ(正しく育った人)の逆で(真っ当な人間に育たなかった人)として解釈すると、「愚連隊」にピッタリする言葉だと感心しました。ハマグリの貝合わせ遊びという風流な遊びは平安貴族が好みそうであり、この「ぐれる」人の歴史を遡るともしかすると平安時代までにもなるかと連想できました。
「ぐりはま」という言葉の漢字表記が、「蛤」の字を180度回転させ、逆さまにしたものという説明(添付4)で、その字の雰囲気を見てみたいとの想いに駆られ、調べてみました。まさにその通りといえる字(添付10)でした。こういった字は中国発の漢字とは言えず、「国字」と言われているようですが、「雲」という字を3つ、龍という字を3つ使って、「たいと」、「だいと」、「おとど」と訓読みさせる字もあり、苗字に使われてニュースになったこともあった84画の字(漢字、国字で最高の画数)もあり、「龍」の字を4つ使って、「テツ」、「テチ」と音読みさせ、「言葉が多い」、「多言」を意味する字もあるという解説に遭遇できました(添付10)。これらの字は勿論常用漢字の仲間という訳にはいきませんが、「国字」として日本国内で使用することが認められているようです。今後言葉が多い人のことを、「テチ」と冷やかしてみようと密かに思いました。
もう一つ、愚連隊にまつわる面白い物語がありました。それは、「愚連隊」という日本語を英語で、「 (young) yobbos.」と訳されるものがあり(添付11)、逆に「yobbo」という英語を調べてみると、『〈英豪俗・侮蔑的〉下品な[不作法な]若者、チンピラ、不良少年、無骨者、与太者、反社会的行動をとる若者◆【語源】boyの逆読み』(添付12)という説明に遭遇し、腰を抜かしてしまいそうな想いでした。
日本語の愚連隊という言葉は、ハマグリの貝合わせ(真っ当派)から、「ハマグリ」を逆にした「グリハマ」(真っ当でない派)に由来していて、英語、豪州語では、boy(真っ当派)から、「boy」を逆にした「yob」(真っ当でない派)で表現しているという文化言語学上の酷似という面白い発見をすることができたことでした。
2010年12月16日(木)
MM
添付1
海老蔵暴行の愚連隊 「局部撮影」など恐怖の報復行為の実態
2010年12月8日(水)10時0分配信
NEWSポストセブン
市川海老蔵の暴行事件の背景には東京のアウトローたちをも震え上がらせる愚連隊の存在があり、海老蔵は彼らのことを語りたがらない。彼らによる「報復行為」を恐れているからだとも言われている。ある某愚連隊OBが、彼らの「報復行為」のひとつを明かす。
「抗争相手など気に入らない相手が単独行動しているところを拉致し、リンチを加える。その後で全裸に剥いて、“人間灰皿”とかいって体中にタバコの火を押しつけたりして拷問のようにいたぶったり、局部を撮影しバラ撒くって話はよくある」
――今回の西麻布の事件でも、海老蔵が最後にはズボンとパンツを脱がされ土下座する様子をケータイで撮影されていたという目撃談まで出てきている。
愚連隊の凶行は、本人だけでなくその家族や恋人にも及ぶ。「宅配便を装った敵対メンバーに実家を襲われた。メリケンサック(コブシにはめる鉄製の凶器)や金属バットなどの凶器で母親を脅して現金まで奪われた」(別の愚連隊関係者)
また、愚連隊の幹部に歯向かった男が行方不明になったり、変死体で発見されたりという噂は至るところに転がっている。しかし、こうしたトラブルが“事件”となることは稀だ。被害者が再度の報復を恐れ、訴えないケースがほとんどだからだ。40代のある暴走族OBがため息混じりに語った。
「俺らの代の暴走族は上下関係がしっかりしてて、先輩に逆らうなんてことはなかった。だけど今の30歳より下のヤツらの間には“年上を捲(まく)る”なんて言葉もあって、自分より年上の先輩でも、気に入らなければ手にかける。もう俺らの時代とは別物だ。手がつけられない」
添付2
日本語俗語辞書
『愚連隊(ぐれんたい)』の意味
愚連隊とは、暴力や不正行為を行う不良少年の一団のこと。
【年代】 昭和時代
『愚連隊』の解説
愚連隊とは不良になるという意味の「ぐれる」と「連帯」の合成語である。戦後、暴力行為やゆすり、たかりといった不正行為をしていた不良少年の一団で、後にテキヤや博徒と並び、暴力団(ヤクザ)の起源のひとつとなる。
日常会話で繁華街をうろつき、暴力行為や犯罪行為をする不良集団を愚連隊と呼ぶことはなくなっているが、映画にもなった「岸和田少年愚連隊」をはじめ、不良漫画、不良小説、最近では暴走族をキャラクターとしたパチスロ機「鬼浜爆走愚連隊」などに見ることが出来る。
添付3
愚連隊
愚連隊(ぐれんたい)とは、終戦直後の日本にあって、既存道徳概念から全く自由に本能の赴くままに暴力行為を行い、自己の欲求を満足させる活動を行っていた不良青少年の一群を指す。
概要
博徒(ばくと)、的屋(テキ屋)とともに、現代型の暴力団の三大源流の一つとなっている。愚連隊はその性格から、既存の非公認武力機構を持つ集団である博徒集団(本来は非公認ギャンブル経営組織)や的屋組織(本来は社寺における祭礼の場を中心とした露店経営者の自治・自衛的調整組織)とも対立し、抗争を繰り返した。
昭和30年代以降の暴力団再編の中、これらさまざまな古典的な非公認武力機構を持つ集団は、愚連隊組織を吸収したり融合するとともに多角的な暴力機構の中に組み込まれ、古典的な博徒集団(ヤクザ)や的屋組織から、今日的な暴力団に変質していった。逆に、的屋組織やその構成露天商の中には、既存の非公認武力機構から離脱して、現代型の暴力団と距離を置くものも出てくるという変化も生じている。
語源
愚連隊は当て字であり、「ぐれる」という言葉から来ている。「ぐれる」は「はまぐり」(蛤)を逆さまにした「ぐりはま」から来ており、「ぐりはまる」から「はま」が落ちて「ぐりる」になり、後に「ぐれる」になったと言われる。
ぐれる
少年などが非行に走ることを「ぐれる」というが、この言葉はハマグリに由来する。江戸時代から使われるようになった。ハマグリの貝殻は貝合わせという遊びにも使われるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質を持っている。このことから、「はまぐり」の倒語として「ぐりはま」という言葉が生まれ、食い違って合わないことを意味するようになった。これが「ぐれはま」に変化し、さらに「ぐれ」と略されるようになる。そして、この「ぐれ」が動詞化したものが「ぐれる」である。ちなみに、「ぐりはま」の漢字は、「蛤」をそのまま180度回転させ、見た目を逆さまにしたものである。
ヤクザとの相違点
親分と子分の間柄について、ヤクザが親子関係としたら、愚連隊は兄弟関係(子分は親分を「兄貴」と呼ぶ)と言える。ヤクザにおける舎弟(兄弟分の弟格)が、愚連隊における子分に多くの部分で当てはまり、比較的、主従関係は緩やかであった。
愚連隊出身者
万年東一 - 万年一派頭領。
安藤昇 - 安藤組組長。
花形敬 - 安藤組幹部。
加納貢 - 安藤の兄弟分。
町井久之 - 東声会会長
三木恢 - 三声会会長。
菅谷政雄 - 旧神戸国際ギャング団頭領。菅谷組組長。
柳川次郎 - 初代柳川組組長
谷川康太郎 - 二代目柳川組組長
添付4
ヤクザ
現代に言う『やくざ』とは、組織を形成して暴力を背景に職業的に犯罪活動に従事し、収入を得ているものを言う。この偏倚(へんい)集団を特徴づける要因の一つに集団内部の「親分子分」の結合がある。詳細は「暴力団」を参照。
隠語
『やくざ』を指す隠語・別称には「ヤー公」「ヤーさん」「その筋の人」「やっちゃん」「『や』の付く自由業」「スジモン」「渡世人」「稼業人」「筋者」「本職」「不良」「現役」「プロ」「ヤー」「893」、頬骨から顎先までを指でなぞり「これもん(Scarface:傷、痘痕のある顔を表現する)」などがある。また主に警察などで使われている「マルボウ」などもある。特定の暴力団にアルファベットで内部分類コードを付けて「マルB(暴力団)」、「マルG(極道)」などと呼ぶこともある。
歴史
本来だとやくざは、『風来坊、根無し草(定住先が無い者)、渡世人、無頼漢、ごろつき、不良』等と同義で、そんな生き方をする人達を指した。その意味では、生業を指す「博徒」と「的屋」(香具師)とは、微妙なずれがある。ただし博徒・的屋にやくざ者が多いのが事実であって、戦後に暴力団と言う言葉が一般になると、主に暴力団の構成組員を意味するように成った。
添付5
暴走族
勃興
1950 - 1960年代ごろから、富裕層を中心に当時まだ高価だったオートバイを集団で乗り回す若者が登場、マフラーを外してけたたましい爆音を響かせながら走り回る様から「カミナリ族」という呼称が生まれた。交通を妨げて疾走する事から交通事故が懸念されたものの、時代は高度成長期であったため、社会が大きく変容することのストレスを受けたモラトリアムの範疇として、マスメディアや文化人を中心にある程度容認される傾向も見られた。
しかし1970年代になると、オートバイは低価格化とともに広く一般へも普及し、とりわけ不良少年に浸透していくと暴行・恐喝事件を起こす傾向が強くなり、一般市民への暴力事件やグループ同士の抗争事件が社会問題として取り上げられるようになった。1972年に富山県富山市中心部の城址大通りから端を発して全国に広がった騒動をきっかけに、「暴走族」の呼び名が広まり警察当局もこの名称を公文書に用いた[2]。東日本では1972年ごろからグループ化が始まり、1974年には確認されているだけで86件の抗争事件が発生。1975年上半期の時点では、全国に571グループ、約2万3千人が存在しており[3]、包丁、火炎瓶、ヌンチャク、角材や木刀などで武装するグループも現れた。グループ同士の対立の増加は、結果として「自衛を目的とした連合の結成」を促すこととなり、1975年ごろの大組織の台頭は小組織の小競り合いを減らした反面、抗争の規模を肥大化させ[4]、グループ同士の争いのみならず、暴徒化した一般の群衆を巻き込んだ暴動にまで発展する事もあった[5]。この時代になると、社会の安全を脅かす存在として、従来の「モラトリアムの範疇」という論は低調になっていった。
添付6
安全・安心に生活するための警察相談
暴力団
不良
添付7
狩野光男画 東京大空襲
戦災で親を亡くし、家も焼けてしまった孤児たちは、世の中の厄介者扱いを受け、施設に収容された。世の人々は戦災孤児たちが上野の地下道に集まった最大の原因、元凶が何であったかを深く考えることなく、「浮浪児」とはき捨てるように言ったのである。
添付8
『
涼宮ハルヒの非行』
犯罪を犯さない不良グループから犯す非行グループに徐々に進化
添付9
「街頭犯罪」とは、
街頭において発生する路上強盗、ひったくり等の犯罪です。
非行グループから進化した愚連隊のイメージに近いか
添付10
漢字部屋
虫部6画(12)
訓:ぐりはま ぐれはま 意味:物事が食い違う。
これは国字。蛤を逆さにしてぐりはまなんていい加減な気がするが、しっかり広辞苑にも載っている言葉である。(漢字は無い)
雨部76画(84)
訓:たいと だいと おとど 意味:苗字に使われる。84画とは最強だ。ニュースにまで取り上げられた漢字(正確には国字)。40年ほど前に証券会社に名詞を持って現れたそうです(その苗字が現存するかは不明)。ほかに100画を超えた字があると言われているが多分デマかと思われる。それがこの字である。
龍部48画(64)
音:テツ テチ 意味:言葉が多い、多言。
これだけ画数が多い漢字で、しかも意味まで分かっていると言うお得な漢字。
添付11
研究社 新和英中辞典 ぐれんたい 愚連隊
(a gang of) hooligans
《米口語》 hoodlums
《英俗》 (young) yobbos.
添付12
英辞郎
hooligan
【名】
1.〈英話〉街のチンピラ◆1890年代以降にロンドンで使われるようになったもの。
2.〈話〉〔酒やドラッグを飲んで〕暴れる若者{わかもの}
3.〈話〉フーリガン◆行儀が悪く、場合によっては暴徒と化すスポーツチームのファン。1960年代にイギリスのサッカーファンの乱暴が問題とされるようになり、この言葉が使われるようになった。
gang
【名】
1.群れ、集団
2.遊び仲間
3.非行集団、ギャング、暴力団
hoodlum
【名】
やくざ、チンピラ、暴力団員{ぼうりょく だんいん}、不良
yobbo
【名】
〈英豪俗・侮蔑的〉下品{げひん}な[不作法{ぶさほう}な]若者{わかもの}、チンピラ、不良少年{ふりょうしょうねん}、無骨者{ぶこつもの}、与太者{よたもの}、反社会的行動{はんしゃかい てき こうどう}をとる若者{わかもの}◆【語源】boyの逆読み