「クイズダービー」の名解答者、はらたいらさんが2006年11月10日肝不全で亡くなった。行年63歳(はらたいらさんは昭和18月3月生れだから、学年的には小生と同じで、本籍も同じ高知)であり、小生にとってはショッキングなニュースだ。
高知では大酒飲みの大会があるほどだから、酒を嗜む人は多い。そこで、アルコール性肝障害について調べた。
<『はらたいらさんが肝不全で死去、「クイズダービー」の名解答者』(2006.11.11)SANSPO.COMより引用>
はらたいらさんは、平成4年から更年期障害に苦しんだが、8年ほどで全快。最近は“男の更年期”などについて講演活動をしていたそうだ。はらさんは9月下旬に都内の病院に検査入院。もともと肝硬変もあったが、末期の肝臓がんと判明した。約1カ月前に現在の病院に転院して回復に努めていたが、2日前に容体が急変。
人なつこい笑顔と物静かな印象が強いが、素顔は大の酒好き。デビューしたてで無収入の時代にも酒を飲み、同郷でもあるちず子さんが働いて酒代を捻出した。売れっ子になってからは、そんな生活にさらに拍車がかかったが、更年期障害をきっかけに、最近は酒量は控えていたという。
<アルコール性肝障害>
[どんな病気ですか?]
大量のアルコールを長期間飲み続けているうちに、肝臓の機能にさまざまな障害を起こす病気です。
肝臓は、体内で代謝によって発生したアンモニアなどの有害物質や、体外から飲食物とともに摂取された有毒物質に対して解毒作用をもっています。酸化、還元、加水分解、抱合といった化学反応で水に溶けやすい形にして、尿や胆汁中に送っているのです。
アルコールも体外から入った有害物質として、その90%が肝細胞の中にあるアルコール脱水酵素(ADS)やミクロソームエタノール酸化系酵素(MEOS)によって分解処理されます。
残りの10%は呼気や汗、尿などに混じって体外に排泄されます。
肝臓が処理できるアルコールの量は無制限ではありません。一般に
、肝臓が1時間に処理することができるアルコール量は、体重60kgの人で6~7g程度とされています。これは、日本酒で4分の1合、ビールなら大瓶4分の1本の量に相当します。(即ち「一気飲み」は肝臓の処理能力を超えている!)大量の飲酒を続けた場合、MEOS系の酵素の働きが活性化し、アルコール処理能力は通常の3倍近くまで増加することがわかっています。しかし、長期間にわたれば、やがて処理能力の限界を超えて障害を引き起こすことになります。実際、1日に、日本酒で6合、ビールなら大瓶6本に相当以上のアルコールを摂取している人で、飲酒期間が15年以上の場合、半数以上の人が肝硬変になるというデータがあります。また、肝硬変にならなくても、何らかの肝障害を起こしているとされています。
アルコール性肝障害は、近年、増加傾向にあります。原因の一つとして、年々増えつづけるアルコールの摂取量があげられます。肝障害には、アルコール以外にウイルスが原因のものがありますが、飲みすぎが原因で肝障害を起こす人が増え、現在は肝硬変全体の30%を占めています。
また、最近は女性のアルコール性肝障害も目立ってきており、背景には女性の飲酒家が増加しています。
一般に、女性は男性よりも肝臓の予備能力が低いといわれており、男性よりも少ないアルコール量で障害が起こります。
[原因と症状]
アルコール性肝障害は、障害の進行程度により、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変の3段階に分けられます。
アルコール性脂肪肝は、肝細胞内に中性脂肪がたまって肝臓が肥大した状態です。大量のアルコールをとり続けた結果、肝臓の脂肪代謝機能が低下したことによって起こります。
アルコール性脂肪肝は、アルコール性肝障害の初期段階です。一般に、日本酒にして毎日3合以上を5年以上飲み続けた場合に起こるとされています。ただし、これはあくまで平均的な数値で、飲み方や総量によって個人差があります。酒量が多ければ、もちろん5年以下でも発症します。また、飲酒に伴って食べ過ぎると、エネルギーの過剰摂取になり、脂肪肝の発症に拍車をかける大きな要因になります。
アルコール性脂肪肝では、だるい、疲れやすいという以外には、特に目立った症状は現れません。そのため、健康診断などで肝機能の異常を指摘されるまで、まったく自覚していないことが多いようです。
アルコール性脂肪肝に気づかないまま飲酒を続けていたり、宴会などで一気に大量のアルコールを摂取すれば、急激に肝臓の状態が悪化し、肝細胞が壊れ、細胞の間に線維がたまってしまいます。
アルコール性肝炎になると、食欲不振、吐気、嘔吐、全身倦怠感、腹痛、下痢などの症状がみられるようになり、ひどいときには体重が減ったり、黄疸や発熱が現れることもあります。また、肝臓が腫れて腹部を押すと痛みを感じたり、腹水がたまることもあります。
それでもさらに飲酒を続けると、最終的にはアルコール性肝硬変に進行します。
アルコール性肝硬変では、肝細胞が破壊され、線維化が進んで硬化していきます。しかし、肝臓は再生能力が高いため、破壊されずに残っている肝細胞が機能の低下を防ごうとして増殖します。その結果、肝臓の表面に、3~4mmの結節がいくつも形成されることになります。こうなると、もう元の状態に戻ることはありません。
肝硬変の場合も、初期には、食欲不振や全身のだるさなどを感じるだけですが、症状が進むにつれて、黄疸や下肢のむくみ、腹水などがみられます。上半身に、毛細血管が5~10mmの範囲で部分的に拡張して赤く発疹のように見えるクモ状血管腫が現れたり、指先や手のひらが赤くなる手掌紅斑も起こります。
さらに悪化すれば、
食道静脈瘤や
肝性脳症を招いて、生命にかかわる事態を引き起こしかねません。
[検査と診断]
肝臓に障害があるかどうかを知るためには、血液生化学検査でGOTとGPTの値を調べることが必要不可欠。
GOTとGPTは、ともにアミノ酸の代謝に重要な働きをするトランスアミナーゼという触媒酵素の一つで、肝臓の細胞に多く含まれています。GOTとGPTは、臓器の細胞組織が障害されると血液中に流出してくるため、通常より高い値を示すようになります。
もう一つ、アルコール性肝障害の診断に重要な指数となるのがγーGTPの値です。γーGTPはGOTやGPTと同様の酵素の一種で、肝臓、腎臓、膵臓などに多く含まれています。アルコールには特に敏感に反応する性質があり、アルコール性肝障害ではほぼ例外なく数値が上昇することから「飲酒反応」とも呼ばれています。
アルコール性脂肪肝では、GOTがGPTより高い値になるのが特徴です。またγーGTP値は100以上を示します。
アルコール性肝炎の場合は、GOT値が非常に高くなるのに比べ、GPTは値は少し上昇する程度などで、GOTとGPTの割合(GOT・GPT比)は3倍以上になります。γーGTP値は、通常の2倍以上になります。
アルコール性肝障害は、血液生化学検査によってある程度診断がつきますが、ウイルス性肝炎など、似た症状が現れるのほかの肝障害と鑑別し、確定診断するためには、さらに超音波検査などを行う必要があります。
腹腔鏡検査や肝生検で肝臓の表面の状態や細胞組織の変化が詳しく調べられるケースもあります。
肝生検によって、肝細胞の脂肪化やアルコール硝子体という特徴的な所見が確認されるときには、アルコール性脂肪肝と診断されます。また、肝細胞の風船様変化、肝細胞周囲の線維増殖といった病変がみられることもあります。
[肝機能検査基準値]( )内:小生のH17年12月検査値
GOT(IU/ℓ):10~40(27)
備考:トランスアミナーゼというアミノ酸の合成に必要な酵素。主に心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く含まれる。このGOTが高値の場合、肝疾患(急性・慢性肝炎・脂肪肝など)や心疾患(特に心筋梗塞)などが疑われる。
GPT(IU/ℓ):5~45(26)
備考:GOTと同じくトランスアミナーゼというアミノ酸の合成に必要な酵素。肝臓に多く含まれる。このGPTが高値の場合、肝臓病(急性・慢性肝炎・脂肪肝、アルコール性肝炎など)が疑われる。
γーGPT(IU/ℓ):男性75以下、女性45以下(45)
備考:GOT・GPTと同じくたんぱく質を分解する酵素のひとつ。アルコールや薬剤などが肝細胞を破壊したときや、結石・がんなどで胆管が閉塞したときに、血中に出てくるもので、肝臓や胆道に病気があると異常値を示す。とくにアルコール性肝障害の指標として有効である。
[治療]
アルコール性肝障害では、原因となっているアルコールの摂取を止めることが重要です。アルコール性肝障害になった人が飲酒を続けていれば、病気は確実に進行します。
逆に障害が軽いうちは、飲酒を制限するだけで完治させることが出来ます。つまり、病状が進むか治るかは、ひとえに断酒できるかどうかにかかっています。
太りぎみの人は、飲酒をやめるとともに、栄養過多にならない様に食事のエネルギー制限をする必要もあります。脂肪肝の場合、禁酒をし、栄養バランスのとれた食生活を続けていれば、肝臓の腫れは3〜4週間ほどで解消されて、元の大きさに戻ります。肝臓の病気は一般に治癒が難しいのですが、アルコール性脂肪肝については、完治させることが十分に可能です。
アルコール性肝炎で症状が激しい場合には、入院治療が必要になります。禁酒と安静を保ち、点滴によってビタミンを補給し、食事療法も併用して肝機能の回復を図ります。また、肝臓の保護、改善のための肝庇護剤という薬を服用することもあります。アルコール性肝炎も軽症のうちなら、完全に治すことが十分に可能です。
アルコール性肝硬変では、やはり病状に応じて一定期間の入院、安静、食事療法が必要になります。
肝硬変にまで進行すると、肝臓を元の状態に戻すことはほとんど不可能です。しかし肝臓がある程度働きを保っている代償期に、禁酒と安静を徹底し、バランスのよい食生活を続けていれば、それ以上の進行を抑えることができます。
[予防と日常生活の注意点]
アルコール性肝障害は、自分の意思で予防が出来る病気です。酒を飲まなければアルコール性肝障害になる心配はありません。しかし、適量の飲酒は気分を爽快にして、生活にうるおいや楽しみをもたらすことも事実です。
要は、肝臓に負担をかけないように、上手にアルコールと付き合うことです。
肝臓に障害を起こさない1日の標準飲酒量は、日本酒で2合程度、ビールで大瓶2本まで、ウイスキーでダブル2杯程度とされています。肝臓にとって安全なアルコール量は、いわゆる「酒に強い、弱い」ということとは全く関係ありません。酒が強いか弱いかは、アルコールが肝臓で処理される過程で生まれるアセトアルデヒドという物質の分解能力の差によるものです。酒を受け付けられる量が多いからといって、肝臓が丈夫というわけではありません。いくら酒に強くても、肝臓にかかる負担は酒が弱い人と同じなのです。
酒を飲むときは空腹時は避け、たんぱく質やビタミン豊富なおつまみを適量とりながら、ゆっくりと飲むようにしましょう。食事をとりながらの飲酒は、アルコールの吸収を遅らせて、代謝をスムーズにするメリットがあります。ただし、どうしても食べ過ぎになりがちなので、分量は少なめにして、摂取エネルギーを抑えるようにしましょう。
また、食事の内容には十分に注意する必要があります。揚げ物や肉料理など高エネルギーの物は肥満の原因になり、脂肪肝の誘因ともなります。
週に2日は休肝日を設ける
アルコール性肝障害の人は、いったん治ったからといって安心しないで、禁酒・節酒を続けていくことが何より大切です。また、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをたっぷりと含むバランスのよい食事をとるよう心がけます。インスタント食品や加工食品に含まれる合成添加物は、薬と同様に有害物質として肝臓で処理されます。アルコール性肝障害で肝機能が低下している時は、インスタント食品は避けましょう。
「沈黙の臓器」といわれるように、肝臓は多少無理がかかっても働き続けるため、気づかないうちに病気が進行してしまうケースが少なくありません。飲酒の習慣のある人は、最低でも1週間に2日は酒を飲まない休肝日を設けて、肝臓をいたわりましょう。