タミフル事故その後の展開は、先日の弊ブログ「
「奨学寄附金」の「異常行動に差無し」報道への関与は有りや無しや?」で心配した通りになってきた。
「
タミフル服用後の異常行動について(緊急安全性情報の発出の指示)」2007年3月20日(厚生労働省/医薬食品局安全対策課)によれば、
[対応]
【タミフルカプセル75】
1.本剤の使用にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。
2.10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。
3.インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチン療法であり、本剤の予防使用はワクチン療法に置き換わるものではない。
【タミフルドライシロップ3%】
1.本剤の使用にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。
2.10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。
3.本剤の予防効能での使用は推奨されていない。
「
<タミフル>保護者も不安…医療機関で混乱も」[03月21日]毎日新聞
原則として10代への処方は控えることが決まったインフルエンザ治療薬「タミフル」。21日休日診療となった医療機関では、保護者からの要望で処方するなど混乱もあった。被害者遺族は厚生労働省の「遅すぎる」措置に怒り、薬を輸入販売する業者は問い合わせに追われた。未明の会見による厚労省の事実上の方針転換に波紋が広がった。
東京都新宿区の須田クリニック。21日インフルエンザと診断された中3の女子生徒(15)の母親が「あさって卒業式なので早く治したい」と希望すると、須田昭夫院長は「10代の男の子で騒ぎになっているが、女の子なので大丈夫でしょう」とタミフルを処方した。だが、女子生徒と母親は薬局まで行ったものの「やはり不安なので別の薬にしてほしい」と戻って来た。クリニックでは、別の薬(リレンザ)に替えて処方した。
中外製薬からの「緊急安全性情報」のファクスを受けた須田院長は「『使うな』と書いてあるわけでなく、原則差し控えなので、事例の多い10代の男子には出さないつもり」と戸惑いを見せる。
葛飾区の栗原医院でも同日、10代の患者4~5人には基本的にタミフルは処方しなかったが、「マンション1階に住んでおり、しっかり監視するので飲ませたい」と両親から要望があった10代の男性1人には処方したという。栗原玄浩院長は「中止は不便。タミフルが使えないと『水分を多く取ってください』などの対処療法となる。それでインフルエンザ自体の危険性を防げるのか心配」と懸念を示した。
◇「対応遅すぎる」 遺族に怒りの声
「対応が遅すぎる。年齢にかかわらず原則、使用禁止にすべきだ」。タミフル服用後の事故で我が子を失った遺族からは、今回の厚労省の対応について怒りの声が上がった。
「薬害タミフル脳症被害者の会」の軒端晴彦代表(49)の長男(当時17歳)は04年2月、タミフルを服用した約4時間後、トラックに飛び込んで死亡した。軒端さんはタミフルによる被害をなくすため昨年7月に会を結成。タミフルと死亡との因果関係を認めて安全対策を取るよう厚労省に要望してきた。
同省が因果関係を認めない根拠にする研究班(主任研究者・横田俊平横浜市立大教授)の調査結果にも疑いを持つ。「タミフル服用直後の影響を調べていないし、研究者は輸入販売業者から研究資金を得ていた。国は根本から考え直すべきだ」と批判した。
05年2月に長男(当時14歳)を自宅マンションからの転落事故で失い、会の事務局を務める愛知県知立市の秦野竜子さん(46)も「省や製薬会社のメンツを守ろうとする『その場しのぎ』に映る」と厳しい。秦野さんは「私たちが科学的根拠を並べて主張しても省は『因果関係は不明』で相手にしてこなかった。異常行動の例が増えてきたから、責任追及を避けるため逃げ道を作ったのなら、(会の活動を)バカにされたような気がする」と話した。
◇HPで注意呼び掛け 中外製薬
タミフルを輸入販売している中外製薬(東京都中央区)は21日、営業社員を各地の事務所に緊急召集してテレビ会議を開き、薬への添付文書の改訂や医療機関への緊急安全性情報の内容を説明。ホームページに「タミフル服用後の異常行動について」と題する文も掲載し、「使用に際しては十分注意下さい」と呼び掛けた。
同社の医薬情報センターには21日、医療関係者などからの問い合わせの電話が集中して、一時つながりにくい状態になった。広報担当の部署にも医師や薬剤師から「どのように対応したらよいか」といった電話が寄せられた。
「
<タミフル>新たに異常行動2件 厚労省が10代の服用禁止」[03月21日]毎日新聞
厚生労働省は20日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用後、いずれも12歳の男児が転落し骨折する事故が新たに2件起きていたことを発表した。同省は「因果関係は明らかではない」としながらも、同日深夜に会見し、10歳以上の未成年については原則、タミフル使用を控えるよう添付文書を改訂、医療機関に「緊急安全性情報」として配布するよう輸入販売している中外製薬に指示したことを明らかにした。予期しない重要な副作用が生じた場合に発する「緊急安全性情報」を同省が出すのは04年3月以来3年ぶり。
同省によると、20日未明、インフルエンザと診断されタミフルを服用した男児(12)が突然、2回にわたり自宅2階に駆け上がってベランダから飛び降り、右足かかとを骨折した。また、2月8日にもインフルエンザと診断され、タミフルを服用した別の男児(12)が2階から飛び降り右ひざを骨折した。担当医は回復が早く、インフルエンザ脳症とは考えにくいとしている。
これらの事故を受け、同省は10歳以上の未成年者については「合併症や既往歴によるハイリスク患者以外は原則、タミフルの使用を控える」とした。10歳以上の理由について、同省の黒川達夫・大臣官房審議官は「9歳までインフルエンザによる死亡例が多いため」と説明した。中外製薬の上野幹夫・代表取締役は「緊急安全性情報の作成・配布は速やかにしたい」と話した。
タミフル服用後に異常行動を起こし、死亡した子供の事故は04年以降、計5件発生している。今年2月には愛知県と仙台市で中学生がタミフル服用後に転落死する事故が相次ぎ、同省ではインフルエンザにかかった未成年について、発症後2日間は目を離さないよう保護者に促すよう医療関係機関に注意喚起していた。
▽厚生労働省研究班の班長としてタミフルの副作用を調べている横田俊平・横浜市立大教授(小児科)の話 飛び降りなどは、タミフルを飲まなくても生じた例もあり、学問的には副作用かどうか分かっていないと考えている。ただ、服用後にいくつも異常行動例が出たことで、厚労省が10歳以上の未成年で原則として服用を差し控えるよう求めたのは社会的措置としては理解できる。
【タミフル】スイス・ロシュ社が製造するインフルエンザ治療薬。同社の推計では、01年の発売以来、世界の服用者の約8割にあたる約2450万人が日本で服用した。
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<タミフル>研究班2氏辞任を要求 脳症被害者の会」[03月19日]毎日新聞記事
インフルエンザ治療薬「タミフル」の副作用を調べている厚生労働省の研究班が輸入販売元から研究資金を受けていた問題で、「薬害タミフル脳症被害者の会」(軒端晴彦代表)などは19日、主任研究者の横田俊平・横浜市立大教授と分担研究者の森島恒雄・岡山大教授について、辞任させるよう求める要望書を同省に提出した。利害関係がある製薬会社からの資金提供で研究結果がゆがめられたとしている。
要望書では、研究資金が会計報告の必要がない「奨学寄付金」として渡されていることなどから、「企業が何も期待しないはずはない。昨年の報告でも最も重要な部分を無視するなど、真実がねじ曲げられている」として、今シーズンの調査にも懸念を示している。
05年2月に14歳の息子がタミフル服用後にマンションから転落死した愛知県の秦野博之さんは会見で「研究班の医師が製薬会社から利益供与されているとは信じられない。関係のない医師が集まって原因を追究してもらいたい」と話した。
タミフルを輸入販売している中外製薬によると、これまで森島教授の講座に使途を制限しない「奨学寄付金」として03、04、06各年に各200万円ずつ、計600万円を支出。また、横田教授の講座にも計1000万円を支出したという。2教授とも研究がゆがめられた可能性については否定している。