(山と渓谷200702号などを参考にさせていただいた。)
従来、雪崩発生遭難の少ない場所といわれた八ヶ岳・赤岩ノ頭で2006年2月11日午前10時半頃雪崩遭難(登山者9人を巻き込み、死者1人、重軽傷者4人)が起きた。(「
硫黄岳の「赤岩ノ頭」で雪崩発生、登山者巻き込まれる」[06年2月11日]毎日新聞)
関係者からの情報によると2006年2月上旬の八ヶ岳の降雪状況は、大雪が続いた北アルプスなど、他の山域とは違っていた。「12月からまとまって降ったあと、1,2月は晴天続きで、むしろ例年より雪は少なかったくらいです。」(赤岳鉱泉従業員)
確かに、小生も恒例の年末山行は、豪雪の北アルプス(西穂高岳)を避け、南八ヶ岳にしている。(「
八ヶ岳山行記(051229~31)」)
雪崩が発生した赤岩ノ頭直下の斜面は、30~40度あり、傾斜からみれば、面発生表層雪崩を誘発しやすい場所である。冬の八ヶ岳では西風が雪を運ぶので、南東向きの斜面は風下にあたり、吹き溜まりとなって積雪は多いところである。降雪後の赤岩ノ頭周辺に、雪庇ができることがある。
確かに、小生が2005年春に赤岳から横岳経由硫黄岳へ縦走後赤岩ノ頭を下るときには雪庇ができており、気になりながら鉱泉へと下って行ったのを思い出す。(「
八ヶ岳縦走記(050319~21)」)
従って、地形的な条件からすれば雪崩が発生してもおかしくない地点である。さて、雪崩発生前後の気象は、鉱泉従業員によると、「2週間以上好天が持続したが、事故の2日前になって急に雪が降り、50cmほど積もった。当日は快晴になったので、登山者は一斉に山に出かけた。」つまり、
晴天が続き、雪の表面がとけ、凍ってザラメ状になった雪面の上に、新雪が多量に乗った状態即ち弱層が発生しており、面発生表層雪崩が起きる典型的なパターンになっていたと考えられる。
その後、小生は2007年2月に硫黄岳に登る機会があり、ちょうど1年前の雪崩遭難が気になり、赤岳鉱泉側からのアプローチを避け、東側(稲子湯)から入山し本沢温泉から硫黄岳をピストンして来た。(「
南八ヶ岳硫黄岳(070211~12)」)
しかし、この時の仲間がこの4月2日に鹿島槍の赤岩尾根で別の原因で(壷足からの脱出中に滑落)遭難したことを考えると雪山は油断大敵であると痛感する。偶然かも知れないが、どちらも「赤岩」がついており気になる名前になってしまった。
<南八ヶ岳の一般縦走路における雪崩危険箇所>
文三郎尾根上部、地蔵尾根上部、中岳沢全体、中山乗越に向かう道の北面斜面、中岳と阿弥陀岳の鞍部、県界尾根上部、真教寺尾根上部、せん添尾根上部、ギボシ南面ほか