「甲斐智枝美さん自殺だった!不整脈に悩む」[2006年7月13日]日刊スポーツによれば、
「10日に急死した80年代の人気アイドル甲斐智枝美さん(享年43)が首つり自殺していたことが12日、分かった。長男を生んだ後から不整脈などの体調不良を訴え、悩んでいたという。」
多分自殺したくなるほどの痛みがあったのでしょう!
現在普及されている、埋め込み型のペースメーカーや徐細動器では対応できなかったのだろうか?
そこで、不整脈について調べた。
心臓は、心臓で発生した電気刺激による収縮と拡張のポンプ活動で全身に血液を送り出している。右心房の上部の洞結節から発生した電気刺激は左右の「心房」筋肉に伝わり、ヒス束を通り、左右の心室に伝える右脚、左脚へ送られる。
〔
関連情報〕
「
怖い不整脈と怖くない不整脈」/国立循環器病センター
・「
怖い不整脈」
「何もしていないのにふうっとする」「急に意識がなくなる。つまり失神する」タイプ<イラスト>は最も危険です。この場合は、一時的に心臓が止まっているか、または極端な頻脈が起こっている可能性があります。失神症状が出た場合は、できるだけ早く病院を受診して、その原因を調べてもらい、治療を始める必要があります。
次に「脈拍数が1分間40以下で、体を動かす時に、強い息切れを感じる」ケース<イラスト>、この時は脈が遅くなりすぎて、心不全を起こしている可能性があります。
三番目は、突然、始まる動悸です。この場合、頻脈が起こっていると考えてよく、「脈拍数が1分間に120以上で、突然始まり、突然止まる」、または「まったく不規則に打つ」ものは、病的な頻脈(頻拍)と考えられます。<イラスト>
多くは脈拍数が150から200前後になりますので、<図2>の下段のように血圧が下がり、脈が触れにくくなり、同時に息苦しくなって冷や汗が出ます。
とくに、この「頻拍」が心室から出ている場合は要注意です。というのは、血液は心室から直接、全身へ送り出されますから、ここで不整脈が続くのは、血液が全身に回らなくなることを意味します。なかでも心筋梗塞などの心臓の病気のある人に心室頻拍という不整脈が出てきた場合は、より怖い心室細動という不整脈に移行することがあるため要注意です。
・「
怖くない不整脈」
脈がたまに飛ぶ程度の人や、症状のない徐脈は心配のないことがほとんどです。また、運動や精神的な興奮によって脈が速くなる場合も心配ありません。
一方、安静にしている時に起こる頻脈のうち、数十秒から数分の間に脈が速くなるけれども、脈拍数はせいぜい1分間120までであり、その後徐々に遅くなる場合も、大抵は病的な頻脈ではありません。
[不整脈の種類]
★
心房細動
心房のいろいろな部分で電気刺激が発生し、それがくるくる回る。心房が1つの袋としてうまく収縮せず、血液がよどみ血栓ができ易くなる。
★
心室頻拍(
怖い不整脈)
心室に異常な電気刺激が発生し、心室内で回転する。異常な刺激により速いリズムで収縮するため、心臓から血液を送りにくくする。
★
心室細動(
怖い不整脈)
心室頻拍がもっと悪化した状態。心室の筋肉が萎え収縮出来なくなり血液を全身に送り出せなくなる。
「正常では、下図にある洞結節が心臓の「発電所」となり普通1分間に50から100回興奮します。電線に相当する伝導路を通り心房全体に興奮が伝わり、次に房室結節という心房と心室の電気の伝達をするいわば中継所を経由して、心室に至ります。
以上により心臓は体に必要な脈拍数を作り、補助ポンプの役割の心房と全身に血液を送る心室が協調して無駄無く働き全身に血液を送り出しています。」
1.「心室頻拍」より
①
心室頻拍
心臓の電気信号が、右心房の正しい位置である洞房結節ではなく、心臓の心室から送られることがあります。これによって、心室頻拍と呼ばれる不整脈が生じます。心室頻拍は心臓の拍動を非常に速くすることがあります。
心臓の拍動の間隔が短すぎて、心臓内に血液が満たされなくなり、送り出される血液の量が減少します。この状態が続くと、脳や身体に十分な酸素が行き渡らなくなります。気が遠くなったり、失神したり、一時的に目の前が暗くなったり、めまいを起こしたりします。やがては意識を喪失し、心臓が停止することもあります(心停止)。
頻拍性不整脈は、小さい子供から高齢者まで、年齢を問わずに発生します。
心室頻拍は、心臓発作や心臓手術その他が原因で心臓に損傷を受けた患者によく発生することが、研究の結果として示されています。遺伝的に心臓に欠陥がある場合にも、心室頻拍を起こすことがあります。また心臓病の病歴がなくても起きることがあります。 ときには、
心室頻拍が死亡の危険が非常に高い心室細動に変わることもあります。心室細動は心停止を招き、やがては突然死につながります。
心室頻拍はいつ発生するか予測がつきにくく、その診断も困難です。心室頻拍を診断するために、まず心電図を取ります。しかし、不整脈によっては断続的に発生するものもあり、心電図検査中に必ずしも症状が現れるとは限りません。この場合、どんなタイプのリズムの乱れかを調べられる別のモニタ検査を勧められることもあります。
②
心室細動
心室細動は、心室のさまざまな場所から電気信号を起こす信号が送られることで生じます。この場合、心臓は通常よりずっと速く、ときには1分間に300回以上という速さで拍動します。このような不規則で異常に速い拍動が続くと、全身に酸素を運ぶ血液が十分に供給されなくなります。心室は収縮するのではなく震動し、血液はほとんど心臓から全身に送り出されなくなります。心室細動を起こした場合は、あっという間に意識を喪失します。酸素が供給されないと、脳や身体の細胞は正常に機能しなくなり、死に至ることもあります。その直前や最中に何が起こったかをほとんど覚えていないこともあります。
心室細動の場合は、患者は数秒で意識を喪失します。患者が急に失神したりする場合、医師はまず、心室細動の可能性を考えます。失神時の心電図で心室細動の異常な拍動が確認できます。
2.心房細動、心房粗動について
心房細動はどんな病気でしょう?
「心房細動とは洞結節からの正常の発電所から心房の興奮が始まらず、心房の筋肉がワナワナと1分間に約300~500回と正常の5倍以上の速さで不規則に細かくふるえ、心房の補助ポンプとしてのまとまった収縮や拡張がなくなる不整脈です。
その結果、心房から心室への血液が効率よく流れなくなり、心臓全体のポンプとしての効率が低下します。心房が毎分約300~500回のうち何割が心室に伝わるかによって心臓全体の脈拍数は変化しますが、心室への伝わり方も不規則なので脈も不規則になります。
電気生理的には、
心房内の種々の場所で無秩序な興奮旋回(マクロリエントリー)が心房細動の原因と考えられています。その引き金として興奮旋回(リエントリー)による
心房性期外収縮や、心房や肺静脈から発生する
異常な自動能焦点のこともあります。
心房と心室の電気的中継所である房室結節が正常ならば心臓全体の脈拍数は速くなり易く、頻脈による動悸などの症状を感じ易い頻脈性心房細動になります。房室結節の働きの低下も合併すると心房の脈拍数が間引きされ心室へ伝わる脈拍数は早くならず、単に脈が乱れた感じによる動悸のみの症状のことや、
房室結節の中継(伝導)障害が強くて徐脈性心房細動となりペースメーカーが必要になることもあります。
またまれにWPW症候群を合併する特殊な場合では中継所の房室結節以外に心房と心室が特殊な経路(Kent束)で短絡していますので、心室の脈拍数が極端に早くなり、
危険な心室性の不整脈になることもありますので、専門医に心電図をみてもらうことが必要になります。」
心房粗動はどんな病気でしょう?
「心房細動と似た病気に心房粗動がありますが、心房細動との違いは心房のふるえ方は毎分250~400回ですが、比較的規則的で、心房と心室の中継所である房室結節で一定の割合で電気的興奮が間引きされて、心房から2対1、3対2、3対1、4対1などの一定の比率で規則的に心室に伝えられますので頻脈でも比較的規則的になります。また体を動かしたりすると急に中継する比率が多くなり急に脈拍数があがります。
電気生理的には、一番多い通常型では上図の様に、
右房内で時計と反対回りの興奮旋回(マクロリエントリー)が心房粗動の原因と考えられていますが、それ以外に
右房内の時計回りや左房内での興奮旋回のこともあります。その引き金として興奮旋回(リエントリー)による
心房性期外収縮や、心房や肺静脈から発生する
異常な自動能焦点のこともあります。
比較的規則的なこと以外は心房細動とは同じ結果ですし、心房細動と心房粗動が同じ人におきることもしばしばみられます。」
心房粗細動の原因になる病気は?
「心房粗細動の原因は心臓に病気のある場合(心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症など)や心臓以外の病気のある場合(甲状腺機能亢進症など)以外に明らかな原因のない場合も多いようです(孤立性心房細動)。
また
アルコールを飲みすぎておこることもまれでありません。
心房細動は年齢とともにおきやすくなり、25歳から35歳では0.5%未満ですが、70歳を越えると5%以上の頻度でこの不整脈が見られるとされ、決してめずらしい病気ではありません。心房粗動の頻度は心房細動に比較するとかなり少なくなります。」
どんな症状があるのでしょう?
「この不整脈が発作的に起こると(発作性心房粗細動)、脈拍数が突然速くなり、しかもリズムの乱れがあるので、
不整脈感や動悸を強く感じたり、発作の開始時に胸痛を感じることもあり、不安になり救急で外来にみえる方も多いようですが、元々心臓の働きが弱った人でなければ数時間程度では心不全にはなりませんのでご安心ください。
また心房粗細動が常に生じている慢性固定性心房粗細動の方の場合で頻脈でない場合は自覚症状のない場合もあります。
徐脈性心房粗細動の場合にはめまいや失神、運動耐久力低下や心不全を呈することもあります。」
合併症にはどんなことがあるのでしょう?
「1)
運動耐性低下や心不全
心臓に病気のある場合や、心臓に病気がなくても頻脈や徐脈のため運動耐久力が落ち、更に長期間にわたると心臓のポンプ力が弱まり、息切れや呼吸困難、足のむくみといった心不全になることがありますので、早めに病院を受診するようにしましょう。
2)
血栓性脳塞栓症
特に心房細動のように心房内の血液の流れが乱れ遅くなる様な状態では血液が澱み、血栓ができやすくなり左心房でできた血栓が飛んで脳動脈がつまり脳梗塞をおこす(血栓性脳塞栓)可能性が高いので予防が必要になります。最近の統計では脳梗塞の1割から2割が心臓が原因で、その半分が心房細動によるとされています。また心房細動の方の年間脳塞栓発生率は4.5%にのぼるとも言われています。」